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米国の経常収支赤字を考える [経済]

国際通貨研究所の行天豊雄氏編著の「世界経済は通貨が動かす」から米国の経常収支赤字
の将来見通しについて、メモしておこう。

米国の経常収支は2006年にGDP比率で6%の赤字をピークに、2009年、2010年は概ね3%
程度となっている。赤字である限り米国の対外純負債の膨張は止まらずいずれ限界となる・・・
という米ドル凋落論は次のようなシナリオを考えている。

米国の経常収支赤字が続くことによる対外純負債の膨張が、海外投資家のドル資金需要を
いつか超える。その時には海外投資家の対米投資フローが細り、あるいは資金が本国へ
引き揚げられる。その結果ドル相場の下落と米国資本市場からの資金流出がスパイラル的に
生じ、ドルの凋落が決定的になるというドル危機シナリオである。

しかし、対外純負債のGDP比率が発散しなければ持続可能であり、長期の対外資産負債の
シミュレーションをすれば、米国の貿易赤字が対GDP比4%程度のマイナスであれば改善ないし
安定化できる。

即ち、米国の対外資産と負債の間には総合投資リターンで過去20年にわたって趨勢的に
4%のプラスのリターン格差があり、しかも対外資産も負債もGDP比率で見て増加するトレンド
が続いている。そのため、莫大な所得収支黒字と評価益(キャピタルゲイン)が貿易赤字の
累積を相殺するからである。

マクロ政策の失敗により、米国のインフレが世界のインフレ率から飛び抜けるような事態と
ならない限りドル危機シナリオは杞憂に終わるだろう。

ということで、この総合投資リターンの格差を4%ないし3%程度に確保していくことが必要で
あり、強いドルは国益という路線はリターン格差を縮小させる為危険となる一方、海外投資家
が対米投資を引き揚げるような短期的危機の場合はリーマンショックのような世界的金融不安
が生じる。

従って、今後このリターン格差が縮小していくトレンドとなれば、ドル相場の趨勢的に緩やかな
下落がソフトランデイングの理想的シナリオとなるということです。

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